20歳を過ぎてから楽器を始めるということ

「大人になって楽器を始める人って何考えているんだろう。下手くそな音しか出せないし、プロになれるわけでもない。迷惑って気づかないのかな」


数年前、とある場所で見つけた言葉。

だいぶ記憶が曖昧だが、衝撃的な文章だった。


というのも、わたし自身、大人になってから楽器を始めたからだ。

 

23歳になった年に楽器を始めた。アルトサックスだ。


f:id:suexxsf:20210325120219j:image


きっかけは、ただのあこがれだった。


弟や、男友達がギターを弾くのをみて、いいなぁと思ったこと。

ピアノ以外にもうひとつ、楽器ができたら素敵だろうなぁと思ったこと。

そして、好きなロックバンド・UVERworldのサックス奏者・誠果氏が格好よかったこと。

そんな単純なあこがれだった。


サックスといえば、ジャズのイメージも強いだろう。

たしかにジャズで聴く、サックスの音色はめちゃくちゃ格好いい。


わたしが最初にあこがれたのは、ロックの中で聴くサックスの音だった。

それは大人な響きで、ロックという強い音の中に刺さる。それにハマった。

 

わたしが通っている楽器教室には、いくつもの楽器コースがある。


その中でサックスを選んでよかったと思うことは、自分で演奏しているというのを感じられること。

自分で息を吹き込み、自分の指がキーを押すことで音を奏でる。

体全体を使って吹いている気がするのだ。

 

大人になって楽器を習うメリットは、いくつもあった。


まずは、できなかったことができるようになること。

これは何でもそうではあるが、苦手を克服できたこと、1曲吹けたこと、など、前に進めたときはやっていてよかったと思う。

そうやってこれからも、成功体験を積み上げていきたい。


その他としては、周りの人に聴いてもらう機会があること。

通っている楽器教室では、アンサンブルが多くある。

特にサックス人口が多いので、サックスだけでの合奏も参加し、発表会にも何度か出た。

大勢でひとつの曲をつくるというのも、青春を感じて、何ともいい。


逆にソロで演奏してみると、緊張しつつも吹き終わったあとの拍手を独り占めできた。

あれも気持ちよかった瞬間だ。


そして何より、友達が増えたこと。

やはり大人になって楽器を始める方は、わたしより年上の方が圧倒的に多い。

そのため、年が離れた友達も多くできた。

一緒に吹きながら学べることは、いっぱいあるのだ。

 

最初の先生の勧めで、いまの楽器を買ったのはサックスを吹き始めて1年半経った夏だった。

結局、先生と同じ楽器を買ったのだが、金額を見てびっくりした。

ローンを組んで、2年かけて完済した。


いまの楽器を選んだ理由は、先生が高校時代からずっと使っているということだった。

そして良い楽器は自分と共に成長する、とも教えてくれた。


しっかりした楽器はそこそこ値が張る。維持費もかかる。

それでも、ここまでお金をかけてしまったから、続けるしかないとも思う。


大人になると、壁にぶつかってもうまく避けたり、はたまた、その壁にぶつからないように回避したり……と、良い意味でも悪い意味でも器用になってしまう。

だからこそ、未知の出来事と自ら向き合い、壁にぶつかり、立ち向かい、そして乗り越えるという経験は、この先も活きてくるはずだと信じている。

それこそが、サックスを通して学んだことだ。

 

最初に載せたショッキングな文章を見て、数年が経った。

いまだからこそ言えることは、これはただの自己満足だということ。


音を楽しむと書いて音楽。自己満足で音を楽しんでいるだけ。

誰のためでもなく、自分のために。

楽器は手段でしかない。音楽を楽しむために、楽器を吹いていると、胸を張って言える。

 

前述のUVERworldのボーカル・TAKUYA∞氏の言葉に、わたしはよく感化される。

彼は、「何かを始めるのに遅すぎることは何もない」とライブで叫ぶ。

ちなみにTAKUYA∞氏は20歳を過ぎて歌を始め、ピアノは24歳から始めたそうだ。


彼は体現する。

年齢で諦めるのではなく、やりたいという気持ちこそが大事なのだと。


また感化され、今年も新しいことを始めたくなり、いまライティングを勉強している。

そして、春からは英会話を勉強するつもりだ。

 

いまはまだ、楽譜をなぞって演奏することで精一杯ではあるが、ゆくゆくは届けたい人に届けられるよう、一音一音大切に吹けるように精進したい。


この文章がどうか、年齢や才能で何かを諦めかけている人に届きますように。

残った日々の中で、1番若いのは今日なのだ。